Netflix『ウィッチャー』、CGを用いた魔法の世界のドラマ化
FramestoreにおけるNukeを活用した短納期エピソード型TVコンテンツ制作
神話や伝説にもとづく全く新しい世界観、手に汗握るストーリー、壮大な冒険・・・現実を超越したファンタジーの世界は私たちをすっかり魅了し、夢中にさせる。
Netflixのドラマシリーズ作品『ウィッチャー』は、現実世界からの逃避欲求を満たしてくれる作品だ。陰謀と策略が渦巻く戦国の世界で、怪物退治を請け負う孤高の主人公リヴィアのゲラルトの戦いを描く、究極のファンタジーだ。
原作はポーランドの作家Andrzej Sapkowskiによるベストセラーの書籍シリーズで、ヒットメーカー CD Projekt Redによるビデオゲーム版3部作も大人気を博した『ウィッチャー』のドラマ化は、Netflixによる最近の映画のフランチャイズ化の世界的成功を背景としたものだ。
もちろん、登場するキャラクターやクリーチャー、怪物などを含め、「大陸」というまったく新しい世界を映像化するには、圧倒的物量の説得力あるCGが必要であったが、本作のVFX制作に携わったFramestoreは、Foundryのコンポジティングツール Nukeを活用して膨大なショットを作り上げ、長年にわたり愛され続けるフランチャイズ作品の表現に寄与した。
Netflix Post Technology Allianceの指定製品であるNukeは、Netflixオリジナル作品のポストプロダクションと配信に必要な技術およびワークフロー要件を満たしている。
FramestoreのVFXスーパーバイザー Pedro Sabrosa氏と、コンポジットスーパーバイザー Owen Braekke-Carroll氏に、『ウィッチャー』のようなエピソード作品の制作現場でよく見られるトラブルに対するNukeの活用について話を聞いた。
膨大なVFX制作
Sabrosa氏は、「『ウィッチャー』には、大規模な背景構築、不気味な怪物やクリーチャー、魔法など、多様なVFXが必要でした。Framestoreは、大規模な背景のすべて、魔法と環境エフェクトの多くを担当しました」と話す。
Framestoreは8つのエピソードすべてを手がけ、完成まで1年もかからなかった。「非常に短いスケジュールの中で、300以上のショットを完成させるまでには多くの多岐にわたる作業が必要で、大規模アセットの構築とFX開発には長いリードタイムが必要でした」。
多くの場合、『ウィッチャー』のようなエピソード作品においては、多岐にわたる制作作業に加えてプロジェクト固有の課題への対応も必要だ。Sabrosa氏によれば、「TV作品への期待は非常に高まっている」という。「つまり、本作のようなプロジェクトにおいては、必要なスケジュール内で作業量をこなしつつ、高いクオリティを維持するために、アジャイルな方法で作業をする必要があるということです」。
Foundryのコンポジティングツール Nukeは、こうしたアジャイル化に対応するために、厳しい納期と高まる品質要求の中でクリエイティブなビジョンを実現するうえで、Framestoreにとって不可欠な存在となっている。
Sabrosa氏は、「Framestoreでは、10年ほど前から広告/TV制作のパイプラインにNukeを使用しており、すべてのプロジェクトで重要な役割を果たしています」と話す。
NukeとHieroの活用
本作のコンポジットスーパーバイザーを務めたFramestoreのOwen Braekke-Carroll氏は、Nukeを活用した複雑な作業の管理について、詳細を次のように説明する。
「2Dベースのデジタルマットペインティングによる街や断崖の拡張、Pyro FXを使ったフルCGの街並み、そしてあらゆる魔法など、すべてのショットでNukeを使用しました」。
「本作のようなプロジェクトにおけるNuke活用の最大のメリットは、制作のあらゆる段階でワークフローの改善と効率化を図ることができることです。私はNukeでマットペイントを作成し、それをライブアセット、ライティング設定、3Dジオメトリとして同じようにパイプラインに渡しました。さまざまな入力をネイティブに扱えるNukeの機能を使うことで、クリエイティブな決定を最後まで行え、その決定をシークエンス全体に簡単に適用させることができます」。
特に気に入っているシークエンスについて尋ねてみると、「巨大なアレトゥーザとカモメの塔は特に気に入っています。印象的な実写プレートと優れたアートディレクションによって、素晴らしい、自然な映像に仕上がりました。アセットやテクスチャのかなり詳細な部分まで作り込んでいます」とのこと。
こうした詳細で美しいVFXを作成するには、アーティストやスーパーバイザーが進行中の作業の状況を確認できる強力なハブが必要であると同時に、できるだけスムーズなプロジェクト進行を図るうえでの現状把握が不可欠だ。FoundryのレビューツールHieroは、Nukeのエコシステムの一部として機能し、ポストプロダクションチーム全体で一貫したレビュープロセスを実現することができる。Nukeのワークフローによるチームの作業効率の向上について、Braekke-Carroll氏は次のように説明する。「NukeとHieroの統合により、パイプラインを介してアセットの受け渡しが行え、編集からコンプ/ライティングまで、同じグレードやカラーのワークフローを直接共有できるようになりました」。
NukeとHieroを併用したアプローチは、Framestoreのコンポジティング/レビューにおいて、特に短期の制作スケジュールが一般的となっているエピソード形式のコンテンツ制作においては最適だ。この種のコンテンツに対する市場と視聴者の需要はますます高まっており、すぐに収まる気配はない。
こうした状況に対応できるツールを見つけることが重要だと、Sabrosa氏は言う。「我々は、刻々と変化する業界のニーズに応えるツールの開発と維持に、長年にわたり取り組んでいる企業姿勢を評価、信頼し、Foundryの製品を採用しました」。
こうした思いは、Foundryの企業哲学の軸を反映するものだ。Foundryは、Framestoreのようなスタジオが直面する、ポストプロダクションにおける課題解決を支援する取り組みを通して、『ウィッチャー』のような優れた作品制作を今後もサポートしていく。
『ウィッチャー』はNetflixで視聴できます。